DeepOne

全てのトロフィーを獲得した

ひどく価値のない……だけど、とびきり大切な約束を叶える旅を。 ―――はじめるとしましょうか。

斎野家の一日は、今日も穏やかに更けていくのだった。

どうか。愛しいコドモたちに。どうか、この子らの進む世界が―――いつまでも―――笑顔と幸せに包まれていますように。

俺の妹を助けてくれて本当にありがとうございます、と。心の底から強く思い、何よりその礼を直接口で伝えたくて。俺は、今来た道を逆走していた。

「命なんて簡単に捨てられるワケないだろうが―――！」

「―――さようなら。顔も知らない好敵手」 その瞬間。周囲の闇そのすべてが音もなく膨張し、魔女と魔導書を呑み込み―――泡のように弾けた。

篤は覚束ない足を、それでも意地と矜持をもって奮い立たせ。 ようやく―――喘ぐように、審議堂の重い扉を閉めた。 それは、文示宮篤の拳に無念という名の呪いを刻ませた。

「でもね？　心配しないで。わたしは寂しくなんてないわ。―――だって」 「―――これからはもう、すぐにでも逢えるんですもの」

「〝打ち倒す〟……なんて覚悟を、安易に望んで受け入れることはできない」 「だけど。もし、それしか方法がないと言うなら―――」 「俺は〝大切な家族を絶対に護る〟という信念のために、どんな罰でも甘んじて受ける覚悟はある」

もう、これからは兄としてではなく、一人の男として。九花に誇れる人間でありたいと、そう強く決意する。

底抜けに騒がしくて、脳天気で、どこまでもお調子者の変人だったけど。アイツは、俺にとってかけがえのない日常の象徴で、そして大切な友人だった。

「―――神代より続く齋宮の業。『神籠継承の儀』か。いいわ。そうでなくっちゃアタシが……佑姫カスミが、この祭に参戦した甲斐がないもの……！」

「なおくん……っ！」 「―――勝負、ありです」 は、満面の笑みを浮かべながら―――無言のまま、天高くガッツポーズをしてみせた。

今、この瞬間。はじめて『明鏡止水』が、産声をあげた。それは、まるで―――古に伝え聞く、地を洗い流す神罰の洪水だった。

莢貴は必ず自力で生き延びる。 俺は絶対に柚原を守り切る。 不安そうに見上げる柚原を、抱きしめながら―――俺は確固たる意志を胸に秘め、出口へ向かって降下した。

たとえ、彼女が本当の九花でなかったとしても。 そんなことで、俺が彼女を愛せない理由にはならない。 俺が惚れたのは、他でもない九花の魂源―――その眩しい生き様そのものなのだから。

「……どう……か、ボクの、代わりに……あの子を、救って……あげ……」 「……頼ん、……だよ、なぁくん―――……」

「後はヌシに任せたぞ、ボウヤ。ご覧の通り最後まで不器用な娘じゃったが―――なに、それこそが其奴の愛いところじゃからのう」

「俺は、理想の俺でいることを諦めない。でも……自分の弱さ、無力さから、目を逸らす真似は絶対にしない」 「だから、透花。お前の答えを聴かせて欲しい。俺は……お前の兄貴でいいのか？俺は―――お前の手を取りに行ってもいいのか？」

「ようこそ、愛しいおきゃくさま。旧ぶるしき知識の門のこちら側へ。歓迎するのだわ」

「ごめん……ごめんなさいぃ……おねぇちゃああぁん……っ！」 「ありがとう……こんなわたしを、それでも愛してくれて……！」

「遅くなって、ごめんな―――透花。不甲斐ない兄貴だけど……今度こそ絶対に、お前のこと、幸せにするから」

「あーあ、残念。また望み通りの展開にはならなかったか。―――けど。ハハ。いいね、それでこそだ」 「どうせ時間は腐るほどあるし。延々と、永遠と楽しませてもらうさ。いつかは俺の望んだ話にたどり着くために」 「―――なあ、尚哉？」

「きみ、は……」 それが俺―――斎野尚哉と。 蒼の魔女―――佑姫カスミとの、宿命の出会いだった。

全てのＢＧＭを聴いた

全てのＣＧを見た